今、介護福祉士の専門性を裏付ける重要なスキルとして「介護過程」が注目されています。
「介護過程」は、「介護職員初任者研修」や「実務者研修」で、カリキュラムに取り入れられており、今、介護の仕事をしていく上では、「介護過程の展開」ができるということが、必須のスキルになっています。
「介護過程」ってそもそもなんだろう?と思われる方のために、このコーナーでわかりやすく解説していきたいと思います。
その1 「介護過程」とは(1)
人間にはもともと「情」というものが備わっていて、目の前に困っている人がいれば、助けようとするでしょう。少なくとも介護の仕事をされている方はそうなのではないでしょうか。
介護をそうした「情」や「良心」がありさえすれば充分であると考えている方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれません。もちろん、介護にはそうした優しい気持ちや共感性があることは、必須の条件です。
しかし、専門職としての介護は、そのような「場面に直面した際の優しい対応」だけでは十分ではないのです。
利用者の情報と、それに対する分析をもとに、目標をもって介護を行っていくこと。これが「介護過程」であり、行う介護の根拠となるのです。
その2 「介護過程」とは(2)
「介護過程」とは、「情報の収集」→「解釈・関連付け・統合」→「課題の明確化」→「目標の設定」→「介護内容の決定」→「介護内容の実施」→「評価」という一連の流れを、介護専門職としての視点で展開し、実践につなげていくことで、利用者の生活上の不便や困難を改善・解消するための思考過程です…と言うと、少し難しく聞こえるかもしれません。
つまり、「介護過程」にはいくつかのルールがあるのです。
まず「介護過程」には、思考と実践の七つの段階(順序)があります。この段階に従って考え進めていくことが一つ目のルールになります。この七つの段階は、以下の通りです。
- 情報の収集
- 情報の分析(解釈・関連付け・統合)
- 課題の明確化
- 目標の設定
- 介護内容の決定
- 介護内容の実施
- 評価
その3 介護過程のルール「情報の収集」
「情報の収集」は、観察(見る・聴く・触る・嗅ぐ等)によって状況を明確化することから始まります。また、家族や協働する介護職や他職種から提供される情報もあります。
集められた情報は、介護の基本的な視点から整理されます。「尊厳について」「安全について」「自立支援について」は、整理するときの重要な視点です。
また、「5W1H〔いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、なにを(What)、なぜ(Why)、どのように(How)〕」を明確にすることで、その情報がもたらす内容の重要度、緊急度を明らかにすることができます。
他職種との連携においては、情報は、誰もが理解できるように客観的な視点で収集しなければなりません。数値化できるものは数字で、できないものはなるべく自分の解釈や感情を交えないようにします。
ただ、介護は感情のある人間と人間の関係において展開される行為ですので、その中で情報を完全に客観化するということは困難なことですが、「情報の収集」においては、こうしたことを自覚しつつ自分の思考をコントロールする必要があるのです。